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日本人英語教育の誤解 社会学からの見解

「日本人と英語」の社会学 −−なぜ英語教育論は誤解だらけなのか

これを読んでおけば大丈夫です。今のところこれ以外に定番の資料がほとんど無い。

 

日本人と学校英語の「誤解」

英語教育については資料が出ています。大学教育の意義はデータ(資料)に当たること。現時点で定番はこの本『「日本人と英語」の社会学 −−なぜ英語教育論は誤解だらけなのか』で、この本しかないことは著者が嘆いている。つまり、政策にあたって(最近流行りの)エビデンスがない状態でことが進んでいる。

「日本人と英語」の社会学 −−なぜ英語教育論は誤解だらけなのか

「日本人と英語」の社会学 −−なぜ英語教育論は誤解だらけなのか

 

第I部 英語力・英語使用
 第1章 英語力――「日本人英語話者」とはどのような人か?
 第2章 教育機会――英語話者になれたのはどのような人か?
 第3章 英語力の国際比較――「日本人」は世界一の英語下手か?
 第4章 英語使用――どんな人が英語を使っているか?

第II部 語学
 第5章 英語学習熱――「語学ブーム」は実際どれだけのものなのか?
 第6章 英語学習者数の推移――どれだけの人が英語を学んできたか?
 第7章 英語以外の外国語の学習に対する態度

第III部 仕事
 第8章 必要性(1)――「これからの社会人に英語は不可欠」 は本当か?
 第9章 必要性(2)――英語ニーズは本当に増加しているのか?
 第10章 賃金――英語ができると収入が増えるのか?
 第11章 職業機会――英語力はどれだけ「武器」になるのか?

第IV部 早期英語教育
 第12章 早期英語教育熱――小学校英語に賛成しているのは誰か?
 第13章 早期英語学習の効果――早期英語経験者のその後は?

 終章 データ分析に基づいた英語言説批判

研究社 - 書籍紹介 - 「日本人と英語」の社会学 ――なぜ英語教育論は誤解だらけなのか

以下、要約(みたいなもの)

英語に関して他の教育関係と同じで学力の問題である。故に問題の根幹も同じ。

英語だけでは稼げない

英語ができると年収が上がるという話の真相は、英語ができる人は他の能力も高いので結果的に年収が上がるという身も蓋も無い話です。

英語によって何かが変わることはあるか?と言えばないです。英語がなくても、そこそこ稼げる(統計は過去なので、これからはわからないが)。理由は英語需要はあまり高くない。現にリーマン・ショックで英語需要が減った。本書では英語が必要な人は日本人の10%位ではないかと見積もっている。ちなみに宮廷早慶上智で同世代の3%位だったと思う。

私見:なので、インセンティブがないので多くの人にとって趣味の範囲内になる。つまり一生懸命やる理由はほぼない。)

英語ができる人は他の教科もできる。全体として能力が高い可能性がある。よって「英語だけ」で年収が高いわけではない。ほかの能力との合わせ技である。英語単体で年収は上がらない=インセンティブとして弱い。

(大昔、某外資系が英語ができる人を集めたら、英語「だけ」できる帰国子女が集まったとか。もちろん英語だけでは仕事にならない。)

さらに学校の英語教育は時間数が少なすぎる。つまり学校内で終わる話ではない。「英語→日本語」だと2200時間かかる(アメリ国務省の意見)。

会話以上に難しいのが文章を読むこと

本筋は日本語を話せるけど理解できない移民の話です。日本語を外国語として考えいると、外国語を読むことがいかに難しいかがわかります。

言葉を話せても文章は読めるようになりません

日本人でも英語を勉強する場合、日常会話程度の英語のやり取りであれば、それほどたくさんの単語を必要としません。

一方で、英語の文章を読んで内容を理解したり、英語を使って専門的な説明をしたりするとなれば、必要な単語の数が急激に増えるとともに、覚えなければいけない文法や概念も増えるのと同じように考えれば、どれだけ大変か理解できるかもしれません。

News Up 話せるけど、わからない | NHKニュース

 

 

エリートは英語が下手

日本のエリート層の英語の出来が悪い。庶民はどの国もだいたい同じ。某イタリアの専門家がイタリアの田舎に行ったら、英語話者と思われて微妙な対応をされたが、イタリア語を話すと相手(イタリア人)は安心したと言っていた。

英語だけができないのか

英語は『学力と階層』とほぼ同じ構造もあり、教育とつく話には必読です。

学力と階層 (朝日文庫)

学力と階層 (朝日文庫)

 

結論を述べると、「英語できない」のではなく「英語できない」可能性があります。英語ができると年収が上がるという神話は先に述べたように、英語以外もできる可能性が高いのです。

つまり国語が得意な人は概して数学も理科も社会も得意であり、言語による推論が得意な人は空間把握や記憶も得意という傾向がある。しかもそれは遺伝子レベルで互いに強い結びつきがあるのである。

「全ての能力が遺伝で決まる」残酷な世界で、凡人はどう生きるか(安藤 寿康) | 現代ビジネス | 講談社(3/4)

 『学力と階層』は一般向けですが、『日本人と英語』は学術よりなので結構読むのは骨が折れます。新書で一般向けが出ないかなあと思います。ちなみに英語教育で統計的な話はこの本くらいしか出ていないです。

 

学校英語の教育コストは思っている以上に高い

スピーキング授業はコストが高いのでクラス40人相手にするとたぶん授業が2つ3つ潰れます。あと学校の先生は雑用が多すぎるので授業以前の問題があります。特に中学は過労死レベル(残業が月80時間)で、世界で一番働いています(統計出ています)。

日本の教員「世界で最も多忙」 部活動が要因 OECD調査 | NHKニュース

教育全体のコスト話。

教育と平等―大衆教育社会はいかに生成したか (中公新書)

教育にゆとりがなく最適化すると一律・画一的が選択されてしまう。

日本語も怪しい

英語がという前に日本語も怪しい人が無視できないほどいる現実があります。

 

AI研究から読解力にいった研究者が言うように、そもそも英語より先にやるべきことがあるというのが研究から導かれる結論です。

www.nikkei.com

 

バイトで算数とか数学とか教えてもまず問題文が理解できない子がホントに多いから、例題が悪いとかそういう話じゃないんだよなマジ

[B! 教育] 英語やプログラミングの前に日本語力が必要

 

www.nippon.com

予想された?ように実害が出ている模様
 

はてな村の人たちは読書家だと思ったけど、意外にこの手の本を読んでいないのかと思いました。

素人は作戦を語り、玄人は兵站を語る。日本人が足りないのは兵站と情報(インテリジェンス)。

『大衆教育社会のゆくえ』は『学力と階層』より前に出た本です。同じ著者で『学力と階層』はこの本のアップデート版です。話はそれほど変わらないですが、中公新書なので難しさがあります。というか資料いっぱいで眠かった記憶があります。

大衆教育社会のゆくえ―学歴主義と平等神話の戦後史 (中公新書)

大衆教育社会のゆくえ―学歴主義と平等神話の戦後史 (中公新書)

 

兵站の部分。お金がないという話。

教育と平等―大衆教育社会はいかに生成したか (中公新書)

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学校の英語教育を知っているかどうかのリトマス試験紙

 英語必修は2002年からです。え?っと思った人は素人です。

「なんで英語やるの?」の戦後史 ??《国民教育》としての英語、その伝統の成立過程

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くもんの中学英文法―中学1?3年 基礎から受験まで (スーパーステップ)

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日本の「ダメ英語」を叩きなおす

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平岡塾長の親指南―私が大学合格の秘訣をお教えしましょう (ゴマブックス)

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現場は泥縄

小学校英語教科化をめぐって、日本人と英語にまつわる誤解(寺沢拓敬) - 個人 - Yahoo!ニュース

 

完全改訂版 バイリンガル教育の方法 (アルク選書)

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史上最悪の英語政策?ウソだらけの「4技能」看板

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小学校からの英語教育をどうするか (岩波ブックレット)

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英語教育の危機 (ちくま新書)

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